【キツネにつままれたインテリスタ】

今季の欧州チャンピオンズリーグは1次ラウンドも残り1試合となり、グループリーグ突破をかけた戦いが、より激しくなってきた。イタリア勢はユベントスミランが既に決勝トーナメント進出を決定したが、残り2チーム(インテルラツィオ)の置かれている状況は決して安心できるものではない。
25日に行われたインテルアーセナル戦は、何カ月も前からサンシーロの記者席を申請するつもりでいたのだが、日本に急用ができ2週間ほど帰国していたため、申請するタイミングを逃してしまった。だから火曜日水曜日のチャンピオンズリーグはソファに寝転びながらのTV観戦になってしまった。
インテルはご存じのようにクーペルを解任して、新たにザッケローニを後任監督として迎えている。カンピオナートを見る限り、ザッケローニの目指す攻撃的なサッカーが、徐々に浸透しているようだ。
先週末の土曜日にサンシーロで行われたレッジーナ戦では、まれにしか見られないカンナバーロのロングシュートを皮切りに、6ゴールをレッジーナゴールにたたき込み、6−0と大勝した。日本からこの日の午後6時に戻って来たことにもよる疲れと、あまりの一方的な試合内容のために、後半5分にファン・デル・マイデがインテルの3ゴール目を入れた後、不覚にも睡魔に襲われ眠ってしまった。大勝することに文句をつけるのはおかしいが、しかしインテリスタとしてはそのうちの何ゴールかを、次のアーセナル戦と土曜日の夜に予定されているユベントス戦に取っておいてほしかった。

  • ファン・デル・マイデとパスクアレのサイドアタック

それはともかくとして、僕が観たインテルの約50分間におけるプレーで最も印象に残ったのは、3トップの一角を担ってインテルの攻撃を引っ張ったファン・デル・マイデのプレーだった。昨シーズン、ブレシアの監督だったマッツォーネは、サイドサイドでプレーするバキーニのことを「サイドのトレクァルティスタ」と形容していたが、この試合のファン・デル・マイデはより攻撃的な「サイドのトレクァルティスタ」として素晴らしいプレーを見せた。
もう1つ好印象を与えた選手は、中盤左サイドでプレーしたパスクアレだった。シーズンが始まってから、ブレシェが入団したことと、前監督クーペルが4人で構成するディフェンスラインを好んだために、これまで出場の機会に恵まれていなかったが、この試合ではファン・デル・マイデが中に切れ込んだ時に、タイミングよくサイドからオーバーラップを仕掛けていた。同じポジションのココが腰痛のために長期離脱する可能性が高いインテルにとって、パスクアレの再発見は重要だ。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/eusoccer/italy/column/200311/1126homm_01.html
 

  • 技術で劣るのに中盤でプレッシャーをかけないインテル

さて火曜日に行なわれたチャンピオンズリーグアーセナル戦である。グループリーグを確実なものにするためには、残り2試合に2連勝しなければならないアーセナルは開始早々から中盤を支配し、試合の主導権を握って行く。さすがにアーセナルの選手はレッジーナの選手と比べ、能力が数倍も優れていることが歴然としている。しかしこのアーセナルのメンバーに、前節プレミアリーグバーミンガム戦で活躍したベルカンプはいない。ハムストリングを痛めたという情報もあるが、基本的には飛行機に乗るのを恐れて遠征メンバーに入っていないのだ。ベルカンプベルカンプだが、こんなベルカンプと高額な金額を払って契約しているアーセナルにも理解が苦しむ(筆者はインテル時代にほとんど活躍できなかったベルカンプの姿を忘れていない)。
インテルの攻撃陣はレッジーナ戦と同じく右からマルティンス、ビエリ、ファン・デル・マイデの3トップ、その後ろに右からサネッティザネッティラムーシ、中盤左はパスクアレでなくブレシェを起用し、ディフェンスに右からコルドバマテラッツィカンナバーロを置き、GKがトルドという布陣で挑んだ。
試合はアーセナルが前半25分にアンリのゴールで先制するが、その7分後にビエリのシュートがDFのキャンベルに当たってゴールとなり、同点で前半を終了した。前半は若干アーセナルが有利という展開だ。インテルで腑に落ちないのは、技術的に劣るインテルの中盤が、アーセナルの中盤に対して特別プレッシャーを掛けていなかったことだ。このためアーセナルが割合と簡単にインテル・ゴールに迫ってくる。しかしアーセナルのディフェンス陣も、インテルの3トップの仕掛ける攻撃を阻止するのに苦労していた。

  • アンリの高速ドリブルを止められない

後半に入ってアーセナルのアンリがますますピッチを上げてインテル・ディフェンス陣を混乱させた。中央左寄りからドリブルでインテル陣内に侵入するアンリをだれも止めることができない。アンリの高速ドリブルは、ロナウドの高速ドリブルと匹敵すると言えるが、ロナウドのドリブルがまるで弾丸が板を貫くように突破するのに対して、アンリのドリブルはウナギが手からすべり抜けるように、するするといとも簡単にマーカーを引き離して行く。この日のような絶好調のアンリに対しては、コルドバもしくはカンナバーロを使って、マンツーマンの密着マークが必要だったろう。後半4分に左サイドから持ち込んだアンリがマテラッツィコルドバを抜き去り、リュンベリに絶好のアシストを供給し、再びアーセナルがリードした。その後も何度かアンリがドリブルからインテル陣内に攻めよるがゴールとはならなかった。
何としても同点にしたいインテルが攻撃に没頭し、ディフェンスが手薄になった時に、またもやアンリが速攻から左サイドをドリブル突破し、正確な左足シュートを決め、3−1と試合を決定した。その後のインテルは集中力も欠き、2ゴールを追加され、1−5という屈辱的な敗戦を喫してしまった。この日のファン・デル・マイデはファンの期待を裏切り平凡なプレーに終始した。唯一ゴールを決めたビエリも昨シーズンまでの勢いが感じられず、既に峠を越えてしまった選手のようだ。そして何よりの誤算はアンリ一人に振り回されたディフェンス陣だ。
アウエーでのアーセナル戦における、あの素晴らしい内容を伴った勝利は一体何だったのだろう。いくら考えてもキツネにつままれたようだ。

  • イタリア勢の真価が問われる今シーズン

これでインテルキエフでのディナモ・キエフ戦に絶対勝利をしなければならなくなった。実力ではインテルがはるかに上回っているが、ホームでの2試合でディナモ・キエフは2連勝していることと、選手に掛かるプレッシャーや、凍(い)てついたキエフのグラウンドを考えると生易しい試合ではないだろう。
一方、水曜日にアウエーでアヤックスと対戦したミランは、後半6分に入れたシェフチェンコのゴールを危なげなく守り抜き、グループリーグ突破を決定した。この試合のミランは、出場停止処分のネスタを欠いていたが、ディフェンスの固さは相変わらずだ。
ホームでベシクタシュを相手に1?1で引き分けたラツィオは、スパルタ・プラハとアウエーでのグループリーグ最終戦に勝利しても、ベシクタシュチェルシーに負けない限り、突破は難しい状況だ。
昨シーズンのチャンピオンズリーグでの3チームベスト4進出は明らかに出来過ぎだが、2シーズン前まで続いた不振もセリエAの正確な実力とは言えなかった。今シーズンはセリエAの真価が問われるシーズンだと思っているが、どのような結果が出るのか興味は尽きない。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/eusoccer/italy/column/200311/1126homm_02.html