【フランコさんのイタリア通信。】

  • 審判が終了の笛を吹いた時

先週、12月10日、ウクライナの首都キエフで行なわれたダイナモキエフインテルの試合のことを、僕は忘れることができないでしょう。なぜなら、終了後の競技場で、こんな光景を見たからです。
驚きました。僕の長いスポーツジャーナリストとしてのキャリアの中でも、こんな光景は一度も見たことがなかったから。
審判が試合終了の笛を吹いたあと、選手たちはじっと互いを見つめあっていました。ほんの数秒だったかもしれませんが、僕にはスローモーションのように見えました。
やがて彼らは、ひとり、またひとりと、抱き合い始めました。みんな泣いていました。敵も味方もありません。さっきまで闘っていた相手と、今は仲間のように抱き合っていました。
成功を祝って? 違います。誰も成功できなかった試合でした。
でも確かに、彼らは、互いの健闘をいたわりあっていました。

試合は1対1で引き分けました。しかも、双方ともチャンピオンズ・リーグに残るためには、この試合に勝たねばなりませんでした。
つまりこの2チームは、ここでヨーロッパ・サッカー最大の大会から退いたのです。敵も味方も共に泣きながら、抱き合って。
 
さて、そこから離れること数百キロのロンドンでは、アーセナルがロコモティブ・モスクワを下しましたが、この2チームは、勝った側も負けた側も、どちらも先に進める順位でこの試合を通過しました。
ダイナモキエフにとってチャンピオンズ・リーグからの敗退は苦かったでしょう。一方のインテルにとっては「苦い」では済まされません。事はもっともっと劇的に深刻です。
2ヶ月ほど前に、インテルは監督を替えました。アルゼンチン人のクーペルを解任し、超イタリア人(l'italianissimo)で、その上、生まれた時からインテルのティフォーゾ(熱狂的サポーター)だったんじゃないか、というくらいのザッケローニを採用したモラッティ会長でしたが、彼の選択が正しかったことは結果が示しています。
セリエAでの一連の好結果のお陰で、インテルは驚異的に順位を上げ、トップのローマやACミランに迫りつつあります。
セリエA、つまりイタリア国内リーグではね。
でも、インテルの本当の目標は欧州チャンピオンズ・リーグ優勝です。いや、これはヨーロッパ中のクラブ・チームの目標、とも言えますけどね。
とにかく、モラッティ会長のお望みは、まずヨーロッパ最強のチームになって、世界一を決めるトヨタカップに参戦することです。
この記事がアップされるころには、今年度のトヨタカップの結果が出ているでしょう。ミランは勝てたでしょうか???

  • 売られ行くヴィエリ?さあ、いったいどうなるか‥‥!

名声を欲しいままにできる到達点はふたつ、イタリア国内ではカンピオナート・セリエAでの優勝、そしてヨーロッパ・チャンピオンズ・リーグ優勝ですが、インテルは、どちらも征していません。
かろうじて、大会としての権威は二番手のUEFAカップで1998年に優勝しただけです。
いい選手は揃っているんですがねえ。ヴィエリレコバカンナヴァーロザネッティ、いすれも世界でトップクラスの値の付く選手たちですが、どうも、インテルの黒青シャツを着ると勝利に結びつかないんですねえ、これが。
インテルモラッティが、この9年間に購入した選手は118人、それに費やした額は、およそ5億ドルだというのに。
中でも問題なのが、以前もお話しした、ヴィエリです。
毎晩のようにディスコで遊んでいる彼を、もはや、ティフォーゾたちすら、愛していません。ヴィエリ、君はスポーツ選手であるからには、遊び歩いていないで、もっと家で休むなど、身体の管理をしたほうがいい。当然です。
ヴィエリが活躍していないか、と言われたら、そうでもありません。彼は多くのゴールを決めています。
でも、ティフォーゾたちは彼を許しません。なぜなら肝心な時や大事な試合でのゴールにはてんで結びついていないからです。
マッシモ・モラッティ会長も、このシーズンの終わりにはヴィエリを売る、という方向に気持ちを動かされつつあるようです。(11/24の記事を見て下さい)
すでに、イギリスのチェルシーが高額を提示してヴィエリを欲しがっています。(またチェルシーですよ!7/14の記事を参照して下さい)
それに、パルマに2年間の約束で貸し出している有能なアドリアーノが、またインテルに帰ってくるということも、ヴィエリにとってはマイナス要因です。
そういうわけで、12月10日のキエフでの試合は大きな意味を持っていたのです。
インテルは単にチャンピオンズ・リーグから外れただけではありません。
これでヴィエリ譲渡の確率がぐんと上がってしまいました。強力なアタッカーとしては、ロナウドとも並び称され、ロナウドが抜けたインテルで彼に代わるアイドルとなったヴィエリですが、ロナウドレアル・マドリードに行ってしまったように、彼もインテルを離れるんでしょうか‥‥?

訳者のひとこと
12月12日現在、インテルセリエAで4位に付けています。上からACミラン、ローマ、ユーヴェと並んでいますから、毎度お馴染みといえば毎度お馴染みの顔ぶれで、ここから上は大激戦区ですねえ。しかしインテルというのは、なにかと話題に事欠かないチームではあります。

http://www.1101.com/francorossi/2003-12-15.html