【チューリップとサイドMFの国からやって来たインテルの救世主】

彼はあまり話好きなほうではない。アンディ・ファン・デル・メイデの口から発せられる言葉は、短く、要点だけを説明するためだけに存在する。彼は言う。
「僕はスクデットを獲るためにインテルにやってきた。そして、それができると確信しているよ」
それで終わりである。
ただ、そうした彼の控えめな態度は、エクトル・クーペル率いる新生インテルを象徴しているようにも思える。今夏のインテルには、例年のような大きな移籍劇はなかった。ただその分、ここ数年に渡りスクデット獲得への障害となっていた、周囲からの過剰な期待とも無縁である。目立った新顔は、ファン・デル・メイデパルマから移籍してきたサブリ・ラムシ、先日心臓疾患が発見され現在リハビリ中のカリルー・ファディガ、パナシナイコスからやって来たギオルゴス・カラグニス、そして初めてのビッグクラブに奮闘するルシアーノくらい。つまり、03−04シーズン版のインテルは、“馴染みの顔”が主体のチームなのだ。ちなみに、その中でひと際輝いているのが、ナイジェリア出身のFWオバフェミ・マーティンスである。今シーズン、大ブレイクしそうな若手の筆頭株ナンバーワンだと言えるだろう。
さて、昨シーズン、アヤックスで最高のシーズンを送ったファン・デル・メイデは、現在、新たなるチームメートに馴染もうと努めている最中だ。インテリスタファン・デル・メイデへ寄せる期待も大きい。ファンが彼に期待しているもの。それは、昨シーズン、セルジオ・コンセイソンからはほとんどフィードされることのなかったFW陣への正確なクロスに他ならない。
 ファン・デル・メイデは言う。「僕は、彼らにパスを出すためにここへ来たと思っている。彼らには、ぜひ、僕のアシストでゴールを量産してもらいたい。あんなに強い2トップなんてどこを探してもいないよ」。

ヴィエリマーティンスの2トップはデル・ピエロトレゼゲ、あるいはインザーギシェフチェンコよりも上かな?
間違いなくそう思うね。彼らこそ、セリエA最高の2トップさ。ヨーロッパ中を探しても、これだけの2トップを見つけるのは難しいと思う。全体的な攻撃力で僕らに勝るのはレアル・マドリーくらいじゃないかな。
チームにはすぐに溶け込めたかい?
居心地は最高だよ。アヤックス時代との唯一の違いは練習方法ぐらいだね。オランダでは、常にボールを使った練習が行われるけど、ここでは午前中のすべてがフィジカル・トレーニングに充てられる。やはり、セリエAは体力重視のリーグなのかなと感じているところさ。
クーペルは君にどんなことを期待しているのだろうか?
実は、監督とはまだあまり話していないんだ。ただ、背後のケアをしなくてはならないことだけはわかっている。サネッティが心配なくオーバーラップできるようにしないといけないね。サネッティとはいつもポジションチェンジの練習をしているよ。
クーペル監督のどんなところを気に入っている?
とても用意周到な監督だと思う。それから、チームに落ちつきを与えてくれる指揮官でもあるね。彼とは言葉の問題もあり、まだ直接話すのが難しいんだ。彼は英語ができなくて、僕はスペイン語ができないからね。僕のイタリア語? まだまだだよ。ピッチの上では、ヘルヴェグとマテラッツィが通訳を務めてくれるから大丈夫だけど。ただ、僕もすぐにイタリア語のレッスンを始めるつもりだよ。そうだな、先生をつけて最低週2回はレッスンを受けないといけないだろうな。
さっき話が出たヴィエリマーティンス以外に、強い印象を受けた選手と言うと?
トルドとカンナヴァーロ、それからレコーバ。特にレコーバは、本当にすごい。彼は今、かなり厳しい批判にさらされているようだけど、僕には理解できないよ。
ここ数年のインテルはずっと、君のようなサイドのMFを探していた。そういう意味のプレッシャーを感じることはない? それとも、それが良い刺激になっているのかな?
周囲の期待がプレッシャーになるなんてことは全くないね。僕は自分の役割を果たすためにミラノに来た。そして、それが可能だと信じているんだ。
先日、モラッティ会長がこんなことを言っていた。 「ファン・デル・メイデには強い印象を受けた。まだ若いのにテクニックが洗練されている」とね。
最高にうれしい言葉だね。モラッティ会長は、人間としてだけでなく、クラブの経営者としても素晴らしい人物さ。彼の“チーム愛”には驚かされるよ。まさに真のインテリスタって感じだね。
さて、そろそろ本題に移っていこうかな。右サイドと左サイド、どちらがやりやすい?
本職は右だと思っている。でも、左サイドのほうが、ゴールは増えるだろうね。
君はアヤックスで2、5、11とゴール数を増やしてきた。今年はいったい何点取るつもりだい?
10点くらいかな。
それは決して簡単な約束じゃないけど?
もしそうなったら、ヴィエリに次ぐチームの得点源になるかもしれないね。
自分のプレーに影響を与えた往年のサッカー選手を挙げるとすれば?
モデルとなった選手はいないんだ。子供の頃、マラドーナに夢中になったぐらいかな。
ゼンデン、オーフェルマルス、それから君。オランダはチューリップとサイドのMFの一大産地だよね。一方、イタリアではそのポジションでの人材がほとんど育たない。どうしてだと思う?
教育の違いだと思う。僕は10歳の時からずっとサイドでプレーしてきた。オランダでは、すごく重要なポジションと考えられているんだ。
世界で最も素晴らしいと言われるアヤックスの下部組織で育ったことについては?
人間としても大きく成長させてもらった。僕の人生の中で最も重要な10年間だったと言ってもいいくらいさ。アヤックスでは、すべてのポジションでのプレーを学んだよ。サッカーを思う存分勉強させてもらったと思っている。
ここ数年のアヤックスのキャプテンはキヴだった。彼はそんなにすごい選手なのかい?
彼はまさにトップクラスのプレーヤーだよ。アヤックス時代、彼が出場停止になった時があったんだ。その時はチームが全然機能しなくて困ったぐらい、本当に存在感のある選手なんだ。彼は、ローマでもきっと活躍すると思う。そうそう、リーグ戦で初対決の時に、家族を交えて会う約束をしてあるんだ。
インテルもキヴのことをずっと追いかけていたんだよ。
彼を必要としないクラブは一つもないはずさ。ただ、ここインテルにも素晴らしいDFが大勢いるよね。
最近ではスタムの獲得にも乗り出しているみたいだけど、そう言えばスタムもまた君と同じオランダ出身だね。
彼が来ても来なくても僕はあまり変わらないような気がする。確かに、スタムは経験もあり現役のオランダ代表でもある。ただ、彼がマテラッツィコルドバカンナヴァーロよりも優れているとは僕には思えない。
もし君がブランカ強化部長の立場にあったら、今のインテルのどこを強化する?
中盤かな。
クーペルがキリー・ゴンサーレスを欲しがっているという話もあるけど。
もし獲得したら、相当な戦力になるだろうね。彼は高度なテクニックを持った素晴らしい選手だから。
ところで、もうミラノでの家は見つかったの?
それが、まだなんだよ。おそらく、コモに住むことになると思う。いずれにしろ、妻のダイアナと生後2カ月の娘イザベラと3人で住める家を探すよ。
君のサッカー人生の中で最も決定的な役割を果たした人物と言うと?
人間としての成長の過程でということなら、やはり母のハーネットだろうね。彼女は、僕に自分を信じることと、一日一日を大事に生きることの大切さを教えてくれた人なんだ。
今の夢は何だい?
今の夢は、インテルスクデットを獲ること。実現可能な夢だと信じているさ。アヤックス時代、カップ戦などでインテルと対戦したけど、常に苦戦を強いられたんだ。強いチームだよ。実際に経験した僕が言っているんだから間違いないさ。
君は今まで2回、インテルと対戦しているんだったね。何か特に覚えていることは?
サネッティのような選手をマークするのは、本当に難しかったってことかな。すぐにマークを外されてしまうんだ。そういう記憶があるからこそ、インテルは決して楽な相手ではないと言えるんだよ。
君のスクデット予想は?
だから、インテルだって!(笑)
そのためには何が必要だろう?
昨シーズン、インテルはユーヴェと7ポイント差の2位でリーグ戦を終えている。これは今シーズンの優勝候補に挙げられても文句のない成績だよ。
もし14年ぶりのスクデットを獲得したら、何かする予定はある?
うーん、友人たちと一緒に思いっきり飲みたいな。

http://www.calcio2002.com/mag/interview/0310_giovani/vandelmayde01.html